20130318_2013年3月12日にあったクリエイティブコモンズの質問に関するご返信 #miku

まず今回投稿の経緯から説明します。
去る3月11日〜3月13日にツイッターで公開雑談がありました。内容は下記トゥギャッターをご覧下さい。

20130312_13著作権とかピアプロとか『初音ミク』さんの雑談(最終版) #miku

その際、話しの流れで、クリエイティブ・コモンズのCCライセンスについて質問が出ました。僕の知識では回答出来なかったので、国際大学の庄司昌彦(@mshouji)先生にご助言をお願いしたところご快諾の上、渡辺智暁 / Tomoaki Watanabe クリエイティブ・コモンズ・ジャパン(CCPJ)常務理事に僕たちの質問内容をご連絡いただきました。そのご返事が庄司先生を通じて届きましたので、下記に質問と併せて記載致します。
なお渡辺CCJP常務理事より、
「公開も名前特定もOKです。さっと書いたものなので公式見解などではなく僕個人のリプライということもちゃんとお伝え頂ければと思います。」と一言ご注意を頂いておりますのでそれをご留意の上、お読み下さい。
(庄司先生と渡辺先生から実名公開及びご返信内容公開については事前にご快諾頂いております。)

  • 僕たちからの質問内容
  1. FLOSSでの自由主義的な必要性からの差別禁止規定は、CC ではどういう扱いになっているか?
  2. CC3.0の日本語版の扱い(進捗?)はどんなかんじなんでしょうか? 2009年くらいに最終版ドラフトという事だったと思うが?
  3. 今後、著作権とC.C.がどう組み合わさって機能すれば、有益・有効な創作活動が出来るのか?
  4. CCを元に作られたピアプロ(PCL)が今後継続的に有効機能するのに大切なことはなんでしょうか?
  5. 5.政府オープンデータにおけるCCの役割・活動。と、一般的クリエイティブ活動におけるC.C.の役割・活動の大きな違いは何でしょうか?
  6. FAQ の人格権の記述に反して、2.1だと明確に「行使しない」と書いてあると思うのですが、これは3.0の話でしょうか? それとも2.1でも可能なんでしょうか? http://t.co/lkqUIMB3t5
  • 渡辺CCJP常務理事のご返事(メール内容をそのまま記載致します。)

僕の個人的なお返事です。CCJPの公式見解などは
特にないと思うので、念のため。


> ピアプロのPCLとC.C.の一番大きな違いって何なんでしょうか?


内容面:
PCLは確か、そのままの複製はNGだと思います。
CCライセンスは、現在のライセンスでは非営利目的で
そのまま複製する行為は、どの種類のライセンスでも許諾されています。
そこがひとつ大きな違いだと思います。

これは赤松健先生が最近構想を発表されていたライセンス案にも
あったし、もっと前にはCommunitas ex Machina としてバーチャル
ネット法律娘 真紀奈さんが構想されていたものにも通じるもので、
日本の同人文化との相性がいいのかなあということを感じさせるところです。

もうひとつ、PCLは第三者の名誉を毀損するとか、公序良俗に反する
とかいう利用を禁じています。これは、例えば僕が初音ミクの絵を使って
庄司さんについてあることないこと言い立てて庄司さんの社会的評判
を落とすようなことをしたら、単に庄司さんに対する名誉毀損になる
というだけではなく、初音ミクの絵を利用したことがクリプトン・
フューチャー・メディアさんの著作権を侵害することにもなる、ということ
かなと思いました。

あと、今さっとPCLの本文を見てみて、「当社は、当社キャラクターの
改変物について、著作権を専有しています。」という一文があるのが
ちょっと気になりました。これは僕が初音ミクの絵を改変したら、その
改変物の著作権クリプトン・フューチャー・メディアさんに自動的に
属することになるということなのかも知れません。

そのほか:
PCLは特定のジャンルの作品群を念頭に作成されたものだと思います。
キャラクター(絵画の著作物の一種と定義されています)を対象と明記
しています。

CCはジャンル横断的で、また、グローバルな展開を念頭においている
というところがあります。音楽でも動画でもテキストでも、というものです。

PCLはキャラクターの権利者でいらっしゃるクリプトン・フューチャー・
メディアさんが自ら利用許諾とその条件を決めています。
CCは権利者ではなく、権利者と利用者の間をとりもつような第三者として
ライセンスを開発・促進しています。

ほかにもまだ大きな違いはありそうですが、この点はこの辺で。。


>FLOSSでの自由主義的な必要性からの差別禁止規定って、CC ではどういう扱いになっていましたっけ?


これは、よくある「許諾の対象を限定したり、特定の集団を排除しては
いけない」というような考え方のことですか? だとするとCCライセンスに
もそのような差別はないです。


> 政府オープンデータにおけるC.C.の役割・活動。


世界各地でCCライセンスを採用する政府があります。
また、CCに関わっている個人がオープンデータや
オープンガバメントの推進のお手伝いはしています。
国によっては、その国のCCチームが組織として何かの
政策案にコメントしたり、証言したり、というのもあると
思います。


> 一般的クリエイティブ活動におけるC.C.の役割・活動の違い。


これはCCと何との違いのことか、よくわかりませんでしたが、
CCはやはり各国で個人や営利事業者や公共団体などさまざまな
クリエイターやコンテンツ事業者などのお手伝いをしています。


> CC3.0の日本語版の扱い(進捗?)はどんなかんじなんでしょうか?  2009年くらいに最終版ドラフトという事だったと思うんですが……。


CC3.0は、日本語の最終ドラフトを英語に翻訳し、
本部からの承認を得てはじめて正式版になるのですが、
その英訳作業に非常に時間がかかったことと、本部が
4.0の検討を始めたことで、ペンディングになっています。
日本以外のCC3.0も同様の状況となっていると聞いています。
大変申し訳ないところです。。


> 今後、著作権とC.C.がどう機能すれば、有益・有効な創作活動が出来るのか?とピアプロPCLが今後継続するのに大切なことはなんでしょうか?


PCLの継続に関する部分の意図がよくわかりませんでしたが、
クリプトン・フューチャー・メディアさんはキャラクターをPCLで
提供することをやめたわけではないと理解しています。その意味では
今後も継続するのではないでしょうか。

有益・有効な創作活動のための著作権のあり方については、それは
それはいろいろな考え方があると思います。

既にある著作物を有効活用できるようにする、という目標を念頭に
置く場合には、

・著作物やその権利者のデータベース化を
行って、ライセンスを取得するための連絡・交渉を簡単にする。
・あるいは、許諾なしに利用できる範囲を拡大して、ネット上の利用は
報酬を払えばOK、というような形にし、現在録音・録画をしている人たち
からお金を徴収・権利者へ分配している仕組みを拡大して、ネットを
通じた利用もカバーする。
・あるいは、日本版フェアユースを実現して、公正な利用であれば、
個々の「著作権の権利制限規定」にあてはまらないものであっても
事前許諾なしにできる、という環境をつくる。

などの議論がもう何年も前からありますよね。

CCライセンスの課題やCC(組織)の課題はたくさんありますが、
・読みやすさ・わかりやすさと、法律的な厳密性のバランスをどう
とるかは常に大きな課題
・国際的に統一されていない著作権法の規定を考慮しつつ、いかに
許諾の内容が統一できるか(どこの国の法律に照らして呼んでも、
同じような効果を持つようなライセンスにできるか)も難しい課題
・CCライセンスをどう使うと「成功」できるのか、もっと解明し、
そのコツを広めること。
・PCLもそうですが、他のライセンスとの互換性をどう確立できるか
が検討課題。ライセンスが増えすぎると、異なるライセンスの下に
ある異なる著作物を組み合わせて何かを作り、それを発表したり、
他の人が使えるようにしたり、ということがしづらくなるので。

この辺りも書いていくとキリが無いので、とりあえずこの辺で。。

多少なりとも参考になれば幸いです。

渡辺
チャット終了


以上が渡辺CCJP常務理事よりのメールでの返信になります。


最後に僕から、
雑談に付き合って頂いた上に貴重なご質問を頂いたTwitterの方々、お忙しい中お相手いただきました庄司先生、質問に丁寧なご返事いただきました渡辺先生に心から感謝致します。追加質問等があった時はまたお願い致します。