【改訂版】「経済産業省アイデアボックス」の状況報告_第25回産業構造審議会情報経済分科会を傍聴して

▼4月2日に経済産業省第25回産業構造審議会情報経済分科会を傍聴しました。
http://www.meti.go.jp/committee/notice/2010a/20100329002.html


【背景】

産業構造審議会情報経済分科会はいわゆる有識者会合です。経済産業省有識者の方々が討議を行い、6月発表の「日本の成長戦略」へのIT戦略・具体案盛込をその開催目的にしています。その中に「経済産業省イデアボックス」の仕組みで一般層のアイデアも取り入れ、政策立案に活用しようという日本で初めての試みが行われています。

一般意見の積極的な政策取り込みは、オープンガバメント化を推進し、民意の政策への反映に繋がるのでもともと賛同ですし、今回の第25回産業構造審議会情報経済分科会は「経済産業省イデアボックス」(2010年2月23日から3月15日実施)終了後最初の報告会でしたので、一般募集アイデアが「ITを活用した日本産業のグローバルな経済成長戦略立案」にどのように活用されていくのか、その経過報告に強い関心がありました。

(参考サイト)
▼「経済産業省イデアボックス」
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/open-meti/

▼「アフターアイディアボックス」(オープンビジネスソフトウェア協会)
http://201002.after-ideabox.net/

産業構造審議会情報経済分科会(第25回)-配付資料
http://www.meti.go.jp/committee/materials2/data/g100402aj.html

▼第25回産業構造審議会情報経済分科会実況関連ツイート(トゥギャッター)
http://togetter.com/li/12314


【気になったこと】(問題提起)

上記にある配布資料をざっとご覧頂ければすぐ判るのですが、今回の結果報告の特徴はまず情報量が膨大だったということです。約2週間で「経済産業省イデアボックス」7000件にも上る投稿数の分類・処理は大変だったと思います。会議中多くの時間がアイデアボックスの報告・内容分析にあてられました。
議事進行は前半が各分野ごとの募集アイデアのまとめ・傾向分析などを担当分野の有識者が行い、その上で、有識者自身の意見を加味した戦略・具体案提案発表も行いました。後半は各発言についての質問や討議になりました。

経済産業省有識者の方々がアイデア出しながら討議を行い、政策に盛込む基本案策定に役立てるという本分科会の位置づけから、上記方法は自然な流れだと思います。以下は、決して批判ではなく単に気になったことです。
今回の募集アイデア報告には違和感がありました。それは、発表者(発表分野)個々により募集アイデアの基本的な扱い、ピックアップの基準、まとめ、傾向分析にばらつきがあったからです。分科会出席者間の判断基準におけるコンセンサスまでは感じられませんでした。


【さまざまな立場の出席者】(私的分析)

有識者の方々
本分科会への「経済産業省イデアボックス」導入発表があった前回の24回分科会も僕は傍聴しています。
その時既に、有識者の方々は各々自分の意見をしっかりと述べていました。それぞれ業界を代表者する優秀なメンバーですので本分科会のテーマを十分に把握し、与件分析を行い、各々が立場を意識した自分自身の意見をしっかり主張し、責任感を持って産業構造審議会情報経済分科会における役割を果たそうとしています。
また、あくまで推察に過ぎませんが参加当初から「経済産業省イデアボックス」本分科会導入があることは想定していないと思います。よくよく考えれば、そんな状態で短期間に膨大な一般人アイデアを預けられて、今回のようなまとめや傾向分析を行ったわけですから、一般募集アイデアの扱い基準において各人の個人差こそありましたが、個々人の持つ能力は本当に凄いと思います。

・アイデアボックス投稿者
一方、一般のアイデアボックス投稿者は本分科会資料閲覧が出来るとはいえ、有識者ほど今回の募集目的を理解しているわけではありません。大多数はただ単純に「こんなIT戦略はあるのかな?」とか「このITアイデアみんなに役立つと思うけどどうかな?」とか「このITアイデアやってくれると有難いんだよな!」といった比較的軽い気持ちでアイデアを出しているに過ぎません。そして直感的に面白いと思われるアイデアや賛成票が多い目立つアイデアから順番に多くの投稿者がコメントし、投票しています。もちろん、どんな立場、どんな専門性を持つ有識者が自分のアイデアを見て、何を基準に判断して、選定するかなんて夢にも思っていません。
ただ気をつけなければいけないのは投稿者の多くは、比較的積極的で進歩的考えを持つtwitterユーザなどネットのアーリーアダプタだということです。しかもほぼ全員が善意で参加しています。たぶん多くの参加者がこんな気持ちを持っています。
経済産業省イデアボックスは政策に一般の意見を広く取り入れる、進歩的で良い試みだから参加しよう。けれど投稿したアイデアがどう扱われ、どう採用されるか?その仕組みが不明瞭だと時間の無駄だし、いやだな。」
僕もそんな投稿者の1人です。

経済産業省の方々
経済産業省の方々はもちろん今回、「経済産業省イデアボックス」の試みが政治・官僚・学会・企業・一般に広く支持賛同を集め、日本のオープンガバメント化推進へと繋がることを願っていると思います。ですので試験的に本分科会の開催途中に「経済産業省イデアボックス」を組み込んだのでしょう。

・傍聴人(僕)
僕自身は、日本の国家・学会・企業の各階層間・各階層内において、創発的意見交換促進や創発的産業推進は「日本のグローバルな経済成長」や「日本の豊かな生活社会創造」に有効で、企業の成長戦略にも繋がると考えています。そして日本のオープンガバメント化がそこに果たす役割は大きいと位置付けています。ですので今回の「経済産業省イデアボックス」の試みが日本のオープンガバメント化推進へと繋がることを心から願っています。


【まとめ】

こんな風に立場や考えの異なるさまざまな人々が今回の「経済産業省イデアボックス」すなわち日本のオープンガバメントへの新しい試みに参加しています。
参加・傍聴して判りましたが、確かにこれは今までにはない新しい、政策立案への試みです。

きっとみんな、日本の経済発展や豊かな社会創造に繋がることを願って参加しています。
きっとみんな、参加をするなら少しでも役立ちたいと思っています。
きっとみんな、役立つならばこれからも参加したいと思っています。


きっといろいろな立場のみんなが、参加することが役立つことを、明確に理解したうえで、
気持ちよく参加できることが一番大切なのです。
オープンガバメントはそんなところから始まるのではないでしょうか?


【提案】

杞憂かもしれませんが、今回の「経済産業省イデアボックス」の試みを成功させ、日本のオープンガバメント活動へと繋げるためには、政治・府省庁・有識者の賛同はもちろんですが、善意を持って参加したアイデアボックス投稿者がリピーターとなり、これから応援してくれるように理解を求めるのが大切だと思います。ネットの評判は良くも悪くもすぐ広まります。

そのためには今出来る範囲で、誠意を持って、投稿アイデアがどう扱われ、どう採用されたかについて、誰にでも判り易く報告・説明を続けるのが一番大切だと思うのです。今回は募集の際、アイデアの利用目的を明確化しているのでなおさらです。
参加者のモチベーションを上げる方法として、場合によって独創的で有効なアイデアインセンティブをつける必要もあるのかも知れません。しかし、アイデア投稿と同時に情報公開ですからこれはなかなか厳しいかも・・・。(笑)
ということはアイデアボックスは基本的にボランティア精神に期待できるまでレベルのアイデア募集ですので、やはりアイデアに対する出口設定(政策への有効活用)明確化が参加者モチベーションUPに重要になります。
今後は、システマチックなアイデア審査手順・採用判断基準プロセスなど、全体の見える化・透明化も必要になってくるでしょう。

そしてもし出来れば、次回「アイデアボックス」は、既存の研究会・分科会に途中から導入するのではなく、最初から「アイデアボックス」導入を想定した政治・官僚・学会・企業・一般がそれぞれの立場で参加するオープンガバメント型議会を開催してはどうでしょうか?


【御礼】

去年の秋からアイデアボックスにただの1参加者として関わっておりますが、この半年で大変な勉強をさせて頂きました。
ネットであっても人は人、その人が持つ誠意は伝わるものです。ビジネスでの繋がりが全くないにもかかわらず、これまで経済産業省イデアボックス担当者のオープンガバメントへ向けた誠意や熱意はすごい力を持って僕まで伝わって来ています。本当に素晴らしいことだと思います。
今後ともご指導の程お願い致します。
そして今後とも「経済産業省イデアボックス」を応援します!頑張って下さい!